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東京高等裁判所 昭和36年(く)44号 決定

少年 T(昭一六・九・一〇生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、少年を中等少年院に送致する旨の決定は不当であるというのである。即ち本件一件記録によれば少年が犯したという犯罪事実は多数回に亘り、少年が主導的立場に立つて、これを犯したようになつているが、事実は他の共犯者に威嚇されて行つたものも多く、盗品を少年の家に置いたのも皆に言われたからである。なお両親がその居住家屋を売却しても被害の弁償を遂げ被害者との間に示談を遂げたいといつているので、これらの点を考慮すれば、原裁判所が少年を中等少年院に送致する旨決定したことは不当であるから、その取消を求めるため、本件抗告に及んだと主張するので記録によつて勘案するのに、本件は少年が他一名ないし数名と共謀して前後数十回に亘り二百余点時価二百万円余の物件を窃取したものであり、仮りに少年が必ずしもその主導的役割を担当していないにしても、所論の如く少年が共犯者の威嚇に屈しやむを得ずこれを犯したと認むべき案件はなく、少年は既に保護観察により補導を受けながら、少しも反省自粛するところなく、前回非行の共犯者らとの結びつきを断ち切れず本件犯行に及んでおり、少年の家庭環境も到底その補導に万全を期待し得るものではないので、仮に所論の如く一部被害の弁償に努力し、被害者との間に示談交渉の可能なものがあつても、少年に対する処分の決定に特に斟酌すべき事項ともならないので、原決定は相当であり、本件抗告はその理由がないから、少年法第三十三条第一項によりこれを棄却すべきものとして主文のとおり決定した。

(裁判長判事 兼平慶之助 判事 関谷六郎 判事 土井王明)

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